The 72nd Annual Meeting of the Japanese Society of Clinical Electrophysiology of Vision (JSCEV)
Standing on the shoulder of giants
Celebrating the legacy of pioneers in vision science,
Paving the way for breakthroughs in EER and beyond.
この度、東京医療センターは2026年2月12日(木)から2月14日(土)までの期間において、第72回 日本臨床視覚電気生理学会{The 72nd Annual Symposium of Japanese Society for Clinical Electrophysiology of Vision (JSCEV 2025)}、並びにジョイントセミナーとして、第1回 アジア臨床視覚電気生理セミナー {The 1st Asian Seminar for Clinical Electrophysiology of Vision (The 1st ASCEV)}、第1回 日本遺伝性網膜ジストロフィイノベーションサミット{The 1st Japan Inherited Retinal Dystrophy Innovation Summit(The 1st IRD innovation Summit)}、第 20回JRPS網脈絡膜変性フォーラム(The 20th JRPS Chorioretinal Dystrophy Forum; The 20th JRPS CRDF)を開催いたします。
臨床視覚電気生理学分野は、過去にノーベル賞学者のGranit教授や多くの有名な学者を輩出しており、医学・生物学分野の中でも、特に先鋭的な分野であると言えます。JSCEVの最近の功績としては学会長である藤波 芳(ふじなみ かおる)を中心に、アジア初の眼科遺伝子治療治験を成功させ、難病であり全く治療法の存在しなかった網膜色素変性症に対して、史上初となる有効な治療法を確立したことがあげられます。遺伝子治療以外にも多くの難治性疾患に対する、機能評価・治療導入を積極的に進め、光を失ってしまった患者様、もしくは光を失う未来を理解しながらも、治療を受けられず不安を抱えている患者様を救うべく、医学研究に邁進しております。
JSCEVは84年の歴史があり、理事長の近藤峰生教授(三重大)を中心に、篠田啓教授(埼玉医科大)、中村誠教授(神戸大)、町田繁樹教授(獨協医科大)、池田康博教授(宮崎大)、山本修一教授(千葉大・JCHO本部)、堀口正之教授(藤田医大)、三宅養三教授(名古屋大)など、臨床と研究、両者において活躍する理事を含めた350名以上の熱心な会員から構成されています。過去に東京医療センターでは、2019年にJSCEVを主催し、医師・研究者・医療関係者・企業関係者・患者様を含めた200名を超える参加者が集い、遺伝性網膜疾患、後天性疾患の視覚経路に関する視覚電気生理学についての熱心な議論が行われました。この開催を契機に、国内初の眼科遺伝子補充治療治験が開始され、2023年に治療患者の視機能改善が認められ、遺伝子治療薬(Luxturna注)による治療が保険診療として認められる形となりました。
JSCEV2025では、テーマを「Standing on the shoulder of giants:巨匠の知見の上に立ち新たな科学を探る」とし、個人からアイデアが生まれ、それが科学として紡がれていく、その様を実感できる学会を目指しております。この分野の巨匠、新進気鋭の若手、ユニークな海外演者を招くとともに、医師・研究者・医療関係者・企業関係者・患者様が、科学の進歩を体感し、未来に胸を膨らませる事ができる議論の場を提供できるよう努めます。特別講演では、元JSCEV理事長の三宅養三教授、前JSCEV理事長の堀口正之教授に、同分野の巨人として、現在の電気生理学の礎となった発見の数々について御講演いただきます。海外招待共演では、英国ロンドン大学のAnthony Robson教授に、電気生理学の国際基準の策定についてご教授いただきます。また、若手によるシンポジウム「I have a dream」では、学会が世界に誇る若手研究者5名による、未来を切り開く最新の研究発表を予定しています。企業共済セミナー、企業展示などでは、電気生理学の分野を牽引する企業との、産学連携による技術革新について、詳細に紹介いたします。
JSCEVが最も重要な研究・治療対象としてとらえる遺伝性網膜疾患は希少疾患であり、国際的な知見の共有が科学の推進に不可欠となります。今回、The 1st ASCEVとして、学会長 藤波 芳、並びにSeoul National UniversityのSe Joon Woo教授をオーガナイザーに据え、韓国・中国・オーストラリア・英国・米国より招待演者を招聘し、The 1st ASCEVを開催します。遺伝子補充治療の導入においては、2020年代よりグローバル化が急激に進み、アジアの治療治験の殆どが国際治験の形式をとり、世界同時進行で難病の解決が加速しています。その一方で、興味深い事に、それぞれの国・地域で、新規治療の導入により、医療・社会がどのように変わったかについては、全く異なる治験が得られています。遺伝子治療を中心に据え、各国の先端医療・先端研究について得たそれぞれの学びを、日本で共有・討議し、より新しい価値を世界へ発信していくことが医学の発展に大きく寄与すると考えております。
昨今、日本における医薬品・医療機器開発の遅れが大きな社会問題となっています。革新(innovation:イノベーション)は、それぞれのアイデアがぶつかり合い、刺激し合うなかで、さらなる発展を遂げ、新たな価値を生みだす事である、と定義されます。医療において、ユニークなアイデアをもつ科学者、新規治療をデザインする医療者、先端的な医薬品を開発する中小企業、新規治療を支える生体機能評価を開発する中小企業、治療開発の総仕上げを行い社会へ届ける大企業、それぞれが高いモチベーションと独創的な発想力をもっていたとしても、それぞれが触れ合い化学反応を起こすことがなければ、新しい価値に到達することは容易ではありません。このような状況に対して、2010年代後半より欧米を中心として、患者様・社会における課題(アンメットニーズ)を輪の中心に据えることで、それぞれのイノベーターが集結し、議論を戦わせる場(innovation summit)が設けられる事が増えてきました。特に、難病分野での新規治療導入などについては、患者中心の課題解決の手法として多くの成功を収めています。今回、アジア初の試みとして、JSCEV 2025開催前日の2026年2月12日(木)にThe 1st IRD Innovation Summitとして、業界・地域の垣根を越えて、患者クループ(スターガルト病・黄斑ジストロフィ)・大学・企業・医療施設・行政その他のキーオピニオンリーダーが、患者・社会における課題を共有し、それぞれの革新について協議し合う事のできる場の提供を致します。また、網膜色素変性症患者会である日本網膜色素変性症協会(Japan retinitis pigmentosa society; JRPS)の学術集会であるThe 20th JRPS CRDFの開催を行う事で、患者目線にたった学術の進歩・発展を協議・発信します。
今回のJSCEV 2025は、国内外より様々な分野の参加者が集い、視覚障害という社会課題を解決する為、巨匠から生の科学の歩みを学び、そして独創的な明るい未来像を発信する学術集会として、大きな成果が期待されています。
第72回 日本臨床視覚電気生理学会 会長
東京医療センター・臨床研究センター
視覚研究部・視覚生理学研究室 室長
英国ロンドン大学 眼科学研究所 教授
英国モアフィールド眼科病院 顧問